– 伝える・整えることで変わる育成のかたち
1. はじめに:「察して動ける人」が現場で評価されるけど…
接客業の現場では、「気が利く」「察して動ける」人が重宝され、評価されることが多いです。
でも実際には、察して動いたつもりでも相手に伝わっておらず、現場が混乱することもあります。
また、察して動けない人は「指示待ち族」などと呼ばれることもありますよね。
本当にそれは、本人だけの問題なのでしょうか?
この記事では、その前提を少し立ち止まって考えてみたいと思います。
2. 察して動いてくれたのに、困った話
あるとき、お客様から注文を受けた複数の商品を集めていたところ、
誰かがすっとフォローに来て商品を取ってくれました。
でも、何も言われなかったため、
「これは私へのフォローなのか、それとも自分が担当している注文なのか」がわからず、思考が一瞬止まってしまいました。
動いてくれたこと自体はありがたい。
でも、“伝えない察し”は、時に判断を迷わせることもあるのです。
3. 察せない人が淘汰される現場の構造
察して動けて、かつ相手と共有できる人は「できる人」。
逆に、察せない人は「指示待ち族」と見なされ、
やがて“使えない人”として現場から距離を置かれていく。
でも私は疑問に思うのです。
もしかしたら彼らは、察するために必要な情報や背景を与えられていなかっただけではないか?
4. 自分自身も「やり方を教わる」だけでは動けなかった
私自身も、新人の頃はよく戸惑っていました。
覚えが悪く、何度も同じことを確認したり、1人で作業を進められなかったりして、ストレスを感じていたのです。
その原因のひとつは、「なぜそれをやるのか」が分からなかったことでした。
もし最初から全体像や目的を教えてもらえていたら、
私はそこから考えて、自分なりに動くことができたはずです。
だから、察せずに辞めていったあの人たちも、
“整えて伝える”育成があれば違っていたのではないかと、今でも思います。
5. 育成の仮説:察しなくても動ける仕組みはつくれる
ここからは、私の経験を通して考えた仮説です。
経験が浅いアルバイトには、「どんな時にどう動くか」を具体的な場面で教えること。
たとえば、ギフト購入で時間がかかりそうなときは、「手伝います」と声をかけて袋を準備したり、熨斗を掛けたりする。
そういった判断のタイミングを、場面ごとに伝えておく。
慣れてきた段階では、「なぜそうするのか」「全体の流れはどうなっているのか」といった背景も共有していきます。
たとえば、「この時間帯が混雑するため、〇時までにここを終わらせる」
「土日にイベントがあるので、逆算して〇日までに準備する」といった目的や優先順位の共有です。
こうした背景の共有がないまま、
リーダーだけが全体像を把握している状態では、
アルバイトは“察しが悪い”と見なされてしまうこともあるかもしれません。
察する力ではなく、**“考えて動ける判断軸”**を育てることが大切だと思うのです。
6. 結び:察する・伝える・整える
察して動くことには、確かに価値があります。
でもそれを“伝えること”“仕組みにすること”ができてこそ、
現場は健やかに、自律的に回り始めるのだと思います。
察しない人を「できない」と断じる前に、
伝え方と整え方を見直してみてもいいのではないでしょうか。